目的と概要

平成19年度に発足した本グローバルCOEプログラムの目的は、「知識循環社会」を支える情報科学技術の研究を通じて当該分野の人材育成を行う国際的な教育研究拠点を形成することです。本拠点がカバーする学問分野は、情報学における、知能情報処理、ヒューマンインタフェース、情報検索、アルゴリズム理論、人文社会情報学などです。平成14年度から18年度までの5年間に実施された21世紀COEプログラムの成果をさらに国際的に展開し、「知識循環する社会を拓く情報科学技術」の教育研究に目標を絞って、多領域の融合により生まれた京都大学情報学研究科を中心に、新たな学問分野の開拓を目指しています。

情報科学技術の進展により、社会基盤としての情報システムが整備される一方、人間・機械(情報機器やロボット)のインターフェイスのあり方、信頼性の乏しい知識にもとづく行動の危険性、社会情報システムの脆弱性など、多くの技術的・社会的課題が表面化するようになっています。これらは、情報科学技術と人間・実社会の乖離により,知の循環が滞ることに起因すると考えられます。情報が知識となり、さらに、知識は他の知識と連携し循環することにより有用なものになります。社会・コミュニティ・組織・個人の間で、知識が滞りなく循環することを促すためには、従来の工学的方法論だけでは行き詰まりがあり、 機能分割による研究チームを形成してもこれらの課題の解決は望めません。情報学と隣接領域の融合チームを編成し、新たな研究の方法論を求めていくことが重要であると考えています。

本グローバルCOEプログラムでは、知識循環を促進するための核となる情報科学技術で重要なものは、知識伝達のためのヒューマンインタフェース、知識探索、実フィールドにおける知識共有を基盤とするコラボレーション、および、これらを高速高信頼で支える計算基盤であるととらえています。

そこで、 (1)情報学・脳科学・生命科学、(2)情報学・管理科学・知財学、(3) 情報学・実社会フィールド、 (4) アルゴリズム理論・高速計算基盤のそれぞれの連携に基づいた「原初知識モデル」、「知識サーチ」、「フィールド情報学」、「知識グリッドコンピューティング」という新しい教育研究コアを設置し、知識循環社会へのロードマップにおける位置づけを明確にしながら拠点形成および教育研究を推進します。

原初知識モデル教育研究コアは、コミュニケーションにおける知識モデルを探求し、一層の人間理解にもとづくヒューマンインタフェースや知識創成について教育研究を行います。知識サーチ教育研究コアは、種々の情報資源から信頼出来る知識を探索(サーチ)する新しいサーチエンジン技術と、これに関連する社会制度・ビジネスモデルの教育研究に焦点をあてます。フィールド情報学教育研究コアは、フィールドとのコラボレーションに基づく社会情報システム構築の方法論の教育研究に焦点をあてます。さらに、これらを支える高速高信頼な計算基盤の構築に焦点をあてた知識グリッドコンピューティング教育研究コアを設置します。これらのコアをインターコア・プロジェクト等を通じて相互連携させ、「知識循環を促す情報科学技術」に関する世界最高水準の国際教育研究拠点の形成を目指します。

① 提案公募型若手リーダーシップ養成プログラムとその国際展開

学内の助教,ポスドク,博士学生に加え,海外の若手教員・博士学生・ポスドクも対象にして,研究プロジェクト・ワークショップ・セミナ開催などを競争的に提案させ,事業推進担当者やアドバイザのもとで遂行させることにより,リーダーシップと国際的な人的ネットワークを有する人材の育成を図る. 学外の学識経験者, 企業, NPO・NGOなどを加えた開かれた委員会で審査する.

② 戦略的コミュニケーションスキル(英語・日本語)向上セミナ

若手研究者に必要となるコミュニケーション能力の向上を目的として,助教,ポスドク,博士学生を対象として,日英両国語によるプレゼンテーションや交渉の訓練やカリキュラム開発を, すでに連携実績のある企業等と協力して行う.

③ 複数アドバイザ制度の国際展開・社会展開

博士学生に対し,指導教員以外の国内外の複数の教員・研究者,フィールドの専門家などにアドバイザとして研究指導を依頼し,研究評価を多面的に行える人材の育成を行う.

④ 海外拠点の充実と博士留学生経済支援プログラム

21世紀COEでも実績をあげた,米国拠点や中国・タイ等のアジア拠点を通じた人的交流/人材育成を推進するとともに,国際共同研究先(欧米/アジアの大学・企業研究所など)への助教・ポスドク・博士学生の派遣,海外からのポスドクの招聘・研修学生受入,外国人博士学生の経済支援等を行うほか,博士学生の経済的支援のためのRA任用予定数を21世紀COEプログラムから増加させる.

⑤ 教育研究コアにおける分野融合型プロジェクト

例えば,知識サーチ教育研究コアでは,情報検索・情報分析の教育研究に知財やマネジメント, サービスサイエンスの専門家が参加する分野融合型セミナやプロジェクトを実施する.