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2006年05月26日

エディンバラの街並み

国際会議で発表するため、スコットランドのエディンバラに来た。

鉄道でロンドンから移動。芝生の向こうに海。

ロンドンの知り合いがエディンバラを絶賛していて、半信半疑だったのだが、
来てみると本当に綺麗な街だった。

中世の街並みを残すオールドタウンと、十八世紀に作られたニュータウンというのが隣接している。
ニュータウンの方にはあまり期待していなかったのだが、実際はそちらの方がずっと良かった。
特に、ニュータウンの西側、繁華街から離れたあたり。

同じ形の石造りの建物がずらりと並んでいて、圧倒される。

裕福な市民たちが暮らしていた街らしい。

屋外広告がほとんどないことも街並みの美しさの一因だと思う。

この中の一軒に泊まったのだが、家の並びの内側はこんな風になっている。

皆、庭付き。
庭好きの人たちなのだと思う。

天気が変わりやすく、短い雨がよく降る。綺麗な虹が見えた。

街の真ん中に聳えるのがエディンバラ城。

会議のレセプション(親睦会)はお城の中庭で行われた。

夏なので、日がなかなか沈まない。午後十時まで明るい。
明るい中でみんな飲んでいる。

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2006年05月24日

イギリスで見かけたもの。

芝生が広い。

喫茶店でテーブルの上に酢の瓶が置かれていたりする。
なぜかというと、イギリス人はフライドポテトに酢をかけて食べらしい。
かけてみると、結構おいしい。
色が若干茶色く、日本の酢とは少し違うのかも知れない。

地下鉄の車両はトンネルぎりぎりの大きさ。「チューブ」と呼ばれている理由が少し納得できた。

また、駅の時計が秒まで表示されている。
それほど時間に正確というわけでもないそうだが。

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2006年05月23日

赤い緑茶

日本以外で広く飲まれている、Arizonaの緑茶シリーズのひとつ。

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2006年05月21日

ロンドンの雰囲気

ロンドンに来た。

雑然とした雰囲気が結構好きかも知れない。
街並みは綺麗なのだが、適度な具合に雑然としている。

鉄道発祥の地だけあって、街の中心部でも地下鉄や電車が市民の足として活躍している。
電車に慣れた身としては、非常に便利。

列車の窓から見下ろすと、小さいながらも綺麗な庭を持った家が多い。
芝生だけでなく、花の咲く灌木が植えられている。
イギリス人は無類の庭好きというのは本当なのかも知れない。

Saint Martinsという学校でファッションのデザインを勉強している高校の頃の友人の家に泊めてもらっている。

Homertonという、ロンドンの中心部から電車で30分ほど行ったところにある三階建てのフラットで、友人たちと四人で共有しているとのこと。

五日後にショーがあるらしいのだが、そのための服の制作に追われていた。

一着の服を作るためにはリサーチに一週間、材料の買い集めや下絵、プロトタイプ(トワレ)の制作に一週間、最終版の制作に二週間で、一ヶ月はかかるらしい。今回のショーでは六着見せるらしく、六ヶ月前から準備を進めてきたとか。すごく大変そうである。

しかし、ショーで注目されることがデザイナーとしてやっていくための前提条件なので、力を入れる。

平日は学校のスタジオで制作しているが、週末は自宅で作業。

ネット上で募ったという手伝いの学生が二人くらい、家に来ていた。

前回はこんな服を作ったそうだ。スカートの部分が陶器製。

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2006年05月19日

メイドカフェで読書会しませんか。

京都でも大阪でもメイドカフェに行ってみましたが、
内装があまり凝っていなくて、
ただの喫茶店にメイドがいるという感じで、
満足のできるものではありませんでした。

そこで、ブームが去ってしまう前に、本場・秋葉原でメイドカフェに行き、
しかもただ行くだけではなく、
メイドたちに囲まれながら、
じっくり読書をしたいのですが、
どなたか一緒に行きませんか。

6月7日-8日、および6月13日-14日あたりに東京に行く予定なので、そのあたりの夕方、
お時間のある方いらっしゃいましたら、ご連絡ください。

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2006年05月16日

神戸ファッション美術館と蔵巡り

今年も合同ハイキングを企画したが、雨により中止になってしまった。
二年連続で中止。ちょっとショック。

六甲山に登るつもりでいたので、その近所で代わりに行ける場所を探し、午前中は六甲アイランドにある神戸ファッション美術館、午後は灘で蔵巡り、夕方から尼崎駅前のあま湯ハウスという天然温泉で入浴し、打ち上げという流れになった。

最初に行った神戸ファッション美術館、庶民には理解できない最先端モードの服がたくさん並んでいるのかと思いきや、けっこうまじめに服飾の歴史を解説していて面白かった。

十八世紀末から現代にかけて、主に西欧で流行した服装がマネキンに着せて並べられている。

十九世紀のイギリスというと、女性の服装はレモン絞りのような膨らんだスカートというイメージがあるが、あれはクリノリン・ドレスといって、流行したのは十九世紀後半になってからだとか。

それに先立つロマン主義の時代には、女性は青白く病的で従順であることが魅力とされていて、それを強調するために二の腕の部分を大きく膨らませたドレスが流行したという。

その前にはエンパイア・スタイルというのが流行していて、古代ローマ風に白い布を基調としたドレス。
フランス革命の前には絹が一番好まれていたそうだが、この時代は木綿に人気が移ったとか。
ポンペイの遺跡が発掘されたことが、この流行が始まったひとつのきっかけだそうだ。

それより前は、豪華絢爛な宮廷衣装である。ベルサイユのばらである。

西洋以外の服装に関する解説もそこそこあって、インド人がサリーを着るのは、ヒンズー教では服の縫い目に魔が宿ると考え、一枚布を好んだからなのだそうである。

企画展では、二十世紀を代表する服飾デザイナーであるシャネル・ヴィオネ・ディオールの三人の作品が展示されていた。

面白かったのは、二十世紀前半、アメリカはヨーロッパのブランドのコピー製品の一大生産地だったという話。
現在、中国で生産される模倣品を取り締まろうと腐心しているアメリカも、かつては模倣品大国だったのである。

多くのデザイナーはアメリカ製の模倣品に悩まされていたのだが、ココ・シャネルは「良いものが真似されるのは当然」とか言って、気にしなかったという。
展示の解説いわく、「そこに彼女の哲学がうかがえる」のだそうだ。

美術館見学の後は、六甲ライナーで南魚崎まで行って、蔵巡り。
菊正宗・浜福鶴・白鶴、の順で三つの蔵を訪ねた。

菊正宗のパンフレットの表紙には、
「生酛(きもと)づくりの心を今に伝える」
と書かれている。それが菊正宗の売りらしい。

微生物による腐敗を防ぐために、昔から醸造中の酒は乳酸菌が作り出す乳酸によって酸性に保たれていた。
現在では速醸酛といって、工業的に作られた乳酸と酵母を一緒に入れて発酵させるのが一般的のようだが、菊正宗では今も乳酸菌から乳酸を作り出している。
二週間も余計に時間が掛かるが、こちらの方法を使った方が酵母が長生きするとか。

生酛の中に含まれているのは、ラクトバチラス・サケという、その名も酒に棲んでいそうな乳酸菌である。
乳酸菌の種類は非常に多様のようだが、これは酒で主に見つかる乳酸菌なのだろう。

菊正宗も白鶴も、江戸時代を再現した蔵の様子を展示している。
大きな樽の上に、はちまきを締めた職人のマネキンが立っていたり。
ところが浜福鶴の蔵だけ、現在の工場の姿を展示している。
金属製の浄水槽とかタンクとかポンプとかが並んでいる。
正直に見せているのだろうけど、見に来ている人は少なかった。

蔵巡りのあと、尼崎に移動。
駅前にある「あま湯ハウス」というスーパー銭湯のような天然温泉で入浴した。
地下1,300mからくみ上げているらしい。強塩性の湯で、有馬温泉に似ているとか。
団体割引で1200円になったものの、通常だと1900円。高い。
だがそれだけ力を入れていて、七種類くらいの風呂がある。
体中に塩を塗りつけてサウナに入る「塩サウナ」は面白かった。

同じ建物に居酒屋が併設されていて、ここで打ち上げ。
NICTで研究員をされているN村さんはかなりの酒好きのようだが、蔵巡りには来ておらず、残念そうに、
「僕、浜福鶴の酒が好きなんですよ」と言っていた。

現代的な工場をそのまま展示していた蔵である。
言われてみると、試飲がおいしかったような気もする。

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2006年05月14日

A地下バー再訪

学生の頃の知り合いで現在は新聞記者をしているWさんが、大学の地下にあるA地下バーに行ってみたいと以前から言っていたので、たまたま東京で働いている僕の妹が京都に遊びに来ていたこともあり、連れだって飲みに行った。

金曜日の晩、A地下バーでは微生物の研究者であるaがマスターをしている。博士論文では大腸菌を扱っていたa、今年は乳酸菌を研究しているらしい。

僕の妹は学生の間、ニワトリの発生を研究していたという話をすると、
「多細胞の人はいいよね。原核生物はほんとに見下されているから」と嘆いた上で、「でも、乳酸菌だと一般人の食いつきが全然違うね。大腸菌を研究してますって言っても、『ふーん』で終わりだったけど。乳酸菌だとみんなすげぇ興味持ってくれる」

乳酸菌は体にいい、のイメージは大きい。

乳酸菌というヨーグルトに入っているビフィズス菌をまず思い浮かべてしまうが、実際にビフィズス菌を研究している人々に言わせると、「乳酸菌とは一緒にしないでくれ」ということになるらしい。

なぜかというと、ビフィズス菌は乳酸に加えて酢酸も分泌する。さらに、酸素に触れると死んでしまう。だから、ビフィズス菌を扱う場合は培地に酸素が入らないように細心の注意を払わなくてはならない。酸素を抜くホッカイロのようなものがあるのだが、ビフィズス菌の場合はそれを通常の倍、入れる必要がある。そんなこんなでいろんな手間がかかるので、「乳酸菌と一緒にしないでくれ」ということになる。
もちろん、ビフィズス菌を乳酸菌に分類する人も多い。

ビフィズス菌がなぜ体に良いと言われているかというと、赤ちゃんの体内ではある時期までビフィズス菌が優勢であり、それが赤ちゃんの異様な元気さの理由ではないかと言われていて、大人もビフィズス菌優勢にしたら元気になるのではないか、という仮説が立てられたためだそうである。

赤ちゃんにおけるビフィズス菌優勢の原因は、母乳ではないかと考えている人もいる。
母乳入り栄養ドリンクとか、ヒットするかも知れない。
もちろん、母乳の成分を合成的に作ることになるのだろうけど。母乳成分入り栄養ドリンク、といったところか。

「だけど、乳酸菌の研究はすごく苦労が多いよ。大腸菌に比べて」とa。

大腸菌であれば現在までにかなり研究が進んでいて、DNAの取り出し方が確立されている。また、データの蓄積もある。
一方、乳酸菌は細胞壁が厚く、遺伝子を入れることが困難。
大腸菌はグラム陰性、乳酸菌はグラム陽性である。
また、研究があまり進んでいないため、DNAを取り出す方法も確立されていない。
乳酸菌というのは乳酸を分泌する菌の総称であるため、DNAを取り出す方法、つまり細胞壁を壊してDNAだけを取り出す方法はそれぞれ異なる。
乳酸菌の中でも、今まで研究が行われてきた株では取り出し方が知られているが、同じ方法を別の株に適用してもうまくいかない。

すなわち、大腸菌で当然のように出来ていることが、乳酸菌では全然出来ていない。
逆にいえば、これから大きく発展していきそうな分野ということになる。

現在のaの研究は、「体にいい乳酸菌」を作ることだそうだ。具体的には、腸壁によくくっつく乳酸菌を探しているという。

「乳酸菌が細胞にくっつくというのは、ホットなトピックなんだよ。腸内フローラとか言われていて。お花畑のイメージね。腸の表面に菌が大量にくっついている状態で」

だが、乳酸菌もビフィズス菌も腸壁にくっつく力が弱く、一日経つと腸から流れ出てしまう。
「だからヤクルトは一日一本なのか」と僕は納得。

aは乳酸菌のたくさんの株の中から、ほ乳類の細胞によくくっつくものを見つけようとしている。
これが見つかると、毎日乳酸菌飲料を飲まなくてもよくなる。
効果の持続する乳酸菌飲料。

「腸にくっつく乳酸菌。ニュース性のありそうなテーマですね」と新聞記者であるWさんに言うと、
「あるある。記事になるよ」

そのような条件を満たす乳酸菌を見つけるため、様々な株の乳酸菌をほ乳類の細胞と混ぜ合わせ、塊を作るものがないか調べている。
だから最近は毎日、顕微鏡を覗いているそうだ。

そうやって100株調べたところ、そのうち2つが大きな塊を作っていた。

「嬉しくて、教授呼んじゃったよ。『塊作ってますよ!』とか言って」

ところが調べてみると、あいにくそのうちのひとつはオランダ人の研究者がすでに昨年、論文として発表していたという。

「ほんのちょっとの差でね。しかも、仕組みまで明らかにされていた」
「もうひとつの方は発表したの?」
「いや、まだできない。どうしてくっつくかの仕組みまで明らかにしないと、論文にならない。だけどなかなか難しいよね。DNAを取り出すこともできないし」
「くっつく仕組みっていうと、糖鎖?」
「糖鎖と、レクチンというタンパク質がくっつく。細菌の方がレクチンで宿主が糖鎖という場合と、細菌が糖鎖で宿主がレクチンという場合の二つがあるけど。前者の方が多いかな」

糖鎖とレクチンの両方を明らかにしないと、論文として発表できないそうである。

「よくくっつく菌だけをたくさん入れるって、ちょっと気味悪い気もするよね。遺伝子組み換えではないからいいのかも知れないけど」と僕。

これからの人々はみんな、様々な善玉菌を体内のあちこちに選択的に棲ませるようになるのだろうか。

「くっつきやすい乳酸菌って、いいことばかりじゃない気もする。虫歯の原因とかになりそう」
「それはありうる」

Wさんからは、取材でイラクに行った時の話をあらためて聞いた。

イラク入りする直前、イギリスの学校で戦場での心得のような講習を受けたという。
講習を開いているのは、元軍人たちが働く警備会社。

その講習の中に、「人質になった時の生き残り方」という科目があった。

いろいろ心得があるのだが、そのひとつは誘拐犯側になるたけ情を移させること。

誘拐犯といっても人間なので、情が移ると殺しにくい。
常にうまくいくとは限らないが、その僅かな可能性にかける。

モノではなくヒトなのだということを感じさせること。
具体的には、何でもいいから小さなお願いをする。
それを叶えてもらえたら、別のお願いをする、ということを繰り返す。

たとえば最初は「顔を洗わせてくれ」。何度もお願いしてそれが認められたら、次は「歯を磨かせてくれ」。
順に願いを叶えてもらうことで、人間として認識させる。

幸い、Wさんはそのような危険な目に遭うことなく、日本に帰ってこれた。
現在は神戸で社会部の記者をしている。

記者としての最近の問題意識は何ですか、所得格差の拡大とかですか、と聞いてみると、

「たくさん稼いでいる人が幸せとは限らないし、所得が少なくてもその分時間があって幸せな人もいるし、格差の拡大って、言うほど問題なんだろうか」とか言う。

「それじゃ、自殺が増加しているという問題はどうですか。自殺する人は幸せですか」と聞くと、
「それは問題だと思うね。すごく取り上げたいと思っているテーマ」

相談に乗ってあげる人が身の回りにいれば、自殺を思いとどまる人も多いのではないか、
米国におけるカウンセラーのようなものがもっと増えればいいのだろうか、という所から、
日本におけるそのような役割を担いうる存在として、生死に関する専門家である仏教のお坊さんはどうか、という話になった。

実際、自殺しそうな人を助けるという事業に全国のお坊さんが立ち上がればいいのに、とか思う。

Wさんのブログ

A地下バー

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2006年05月10日

テレビや新聞の取材

今日は、小学校向けの検索エンジンを開発するプロジェクトに対して、新聞社やテレビ局が取材に来た。

新聞社の人たちは、システムによって検索される写真の枚数や、生徒の数、
授業協力を始めた時期、といった具体的なデータを何度も確認していた。

テレビ局の人は、開発したシステムのデモを見せると、
「その動作、もう一回してください」などと言って、何度も撮り直していた。

最初は子供たちの様子を中心に映すつもりだったらしいのだが、
生徒の顔はあまり映さないようにしてほしいという要望が先生方からあり、
後ろ姿だけだとあまり明るく見えないので、
システムを開発した僕らの側を中心に据えた構成に変更します、と言っていた。

最終的に出来上がる番組の構成を考えながら臨機応変に取材しているのが興味深かった。

また、新聞とテレビでは気にするところが違うようなのも面白い。

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2006年05月07日

ミリテク

木屋町の飲み屋、八文字屋に久しぶりに行くと、
散らかり放題だった店内が綺麗に模様替えされていて、
今までカウンターの奥にあったレコードプレーヤーがテーブル席に移されていた。

その横にはレコードが平積みにされている。

興味を引かれて、一枚、手にとってみた。

マスターの甲斐さんに、溝のある部分に触ってもいいよと言われて、触ってみる。

恥ずかしながら、レコードの表面がつるつるしているということを今になって初めて知った。
もっと、ざらざらしているものだとばかり思っていた。

いや、実際のところ、僕の記憶にあるレコードはざらざらしていたような気もする。
本当にこんなだったか?

「雑誌の小学一年生の付録でついてきたレコードは、もっとざらざらしていた気がするんですけど」
「それはソノシートでしょ」
「なるほど」

ラベルに「33 1/3 RPM」と書かれている。つまり、1分間に33と1/3回転するということ。
そのレコードには27分の音声が録音がされているというから、
単純に計算して、1000周近い溝が埋め込まれていることになる。

溝のある部分の幅は10cmもない。つまり、1mmに10本以上、溝が刻まれていることになるのだろう。

表面がつるつるしているのも当然である。

かなりの微細加工技術。

ナノテクならぬ、ミリテクだ。

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2006年05月05日

地下農場見学のあと

大手町のオフィス街の地下でパソナの農場を見学した後、参加してくれた人たちと一緒に食事に行った。

いろんな分野の人たち、しかもかなり面白い人たちが参加してくれたおかげで話が弾み、様々なことを聞けた。

以下、その時に教えてもらったこと。


◆大学で地球温暖化を研究されているK先生。

調査で最近までアラスカに行っていた。
一番近いスーパーまで1000キロという場所。
零下なのに、蚊がものすごく多い。アラスカは基本的に蚊が多い。
カモシカの赤ちゃんが蚊に血を吸われすぎて死んだりする。

白夜のため日が沈まないので、20時間ぶっつづけで調査する人とかいる。
娯楽が何もないので、休日はハイキングとか。
寒冷地のため、植物は50年で30cm伸びるくらい。
そんなのを踏みつけてハイキングするのはすごく気が引ける。

地球温暖化の原因がCO2だというのはまだ確証されたわけではない。
様々な調査によって検証していかなくてはならない。
ジェット機が高層大気に放出する水蒸気で温暖化をすべて説明できるという人もいるし。

「温暖化ガスがあるなら、冷却化ガスというのはないんですか?」と僕。
「ガスじゃないけど、エアロゾルというのは太陽光を遮断するので、気温を下げると言われている」

温暖化に関する調査は世界中あらゆるところで行われている。
普通にはあまり行けないところに行けるのがこの仕事の魅力。

「南極の昭和基地に行きたい!」と主張する僕とriri嬢に、
「昭和基地には芸術家枠というのがある。芸術家の人たちが南極の風景を絵に描いて残したりとかしてる」


◆写真家のriri嬢。

海外のギャラリーでは、オーナーとキュレーターという役割分担がある。
オーナーはギャラリーの所有者。
キュレーターは目利き。
良いキュレーターがいるかどうかで、ギャラリーの人気はほぼ決まる。
日本ではオーナーのおっちゃんがキュレーターを兼ねちゃったりしていて、
適当に作品を選んで展示したりしている。

日本と海外では、芸術作品につける値段が全然違う。

ここで、音大で声楽をやっていたyuko嬢がコメント。
「ホテルに声楽家を派遣する仕事も趣味でやっているのだが、
一流ホテルであってもびっくりするような安い値段を提示してくる。
申し訳なくて、紹介するのやめようかとか思う。
それでも一流ホテルで歌えるということで、みんな引き受けてしまう」

riri嬢の実家は焼酎の蔵元だが、40度というきつい焼酎を作っている。
これを作るのはなかなか難しく、度数が毎年違ってしまう。
なので、いつも手書きで度数を書いている。
焼酎好きに好まれている逸品だとか。「蔵純粋」という名前。


◆ウェブ制作の会社を経営しているyuko嬢。

経営者の仕事は基本的に、段取りすることである。
あの人をこれにまわして、この人をあれにまわして……。
と、日々パズルを考えているかのよう。

デザイナーに払う代金は、その人の経験に応じて決める。
安すぎたらモチベーションが下がるし、
最初から高すぎるのも問題だし。難しい。

今は6-7人でやっているが、それでもてんてこまい。
10人以上を直接動かすのは難しいと思う。
おそらく、中間管理職が必要になる。

仕事の上でもうひとつ大変なのは、クライアントからの細かい要望。
最近まで美容関係のサイトを作っていたのだが、
載せた写真に対して、「この皺とって」とか言われる。
それで苦労して画像処理ソフトで顔の皺を取ったりする。

食事している間もyuko嬢の携帯には何度も仕事の電話がかかってきて、しょっちゅう店の外に出ていた。
連休前に仕事を終わらせたいので、なおさら忙しいとのこと。


◆デイトレーダーのしんご氏。

最初の頃は6台のPCに囲まれて仕事していたが、
今ではこれまでに蓄えた知識をエクセルのマクロに組み込み、
自動的に売り買いさせているので、
普段はノートPC一台を使うだけで十分。

海外市場を扱っているので夜活動しているのだが、
市場が閉じる時に、すべて現金化する。
これだと価値変動がないので、安心して眠ることができる。

「業種とか、関係ないんですよね」とyuko嬢が訊く。
「関係ない。あがり方を見ているだけ。社会貢献性ゼロだね」
「まじすか」
「最初の頃は何かの役に立ってるんじゃないかとか、いろいろ考えたけどね。でも結局、ゼロだね」
「自分がその仕事に向いていると思うのはどんな時ですか」
「負けても淡々としていられるところ。始めたばかりの頃は負けるたびにびびってたけど、今は大丈夫」

と、淡々と語った。


◆厚生労働省で国家公務員をしているエヌ。

人材派遣業は戦後、暴力団の主要な活動のひとつであったため、禁止された。
山口組も元々は神戸で港湾労働者を派遣することでスタートした団体である。

派遣が行える分野は長らく限定されていたが、
昭和50年代からオフィスのOA化が進み、どうしても人材の派遣が必要となったため、
そのための枠組みが作られた。
そして昭和61年に新しい人材派遣の法律ができて、それ以降、規制緩和が急速に進んでいる。


◆監査法人に勤めるカツオさん。

監査法人というのは企業の会計を監査する組織であるが、
会社というよりは緩い繋がりでまとまっている。共同の事務所という感じ。
自分自身は主にコンサルティングをやっている。
民主党の政策を立案するシンクタンクのようなこともやっている。

監査の仕事では怖い企業を相手にすることも多い。
企業の人に、「ここは見逃してくれ」などと言われて百万円の札束を渡された同僚もいるらしい。

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2006年05月03日

パソナの地下農場見学

東京のオフィス街の地下に、農場がある。
人工的な光を当てて、米や野菜を栽培しているとか。

人材派遣会社のパソナが農業分野への人材派遣を目指し、
多くの人に農業に親しみを持ってもらうことを目的として、
体験農場というのを運営しているのである。

都市における就職難と農村における人材不足を共に解決してしまうという、大変興味深い目標だと思う。

ぜひ行ってみたいと思い、ブログなどで宣伝してみたところ、興味を持ってくれる人が案外多く、
四月下旬のある日、連れ立って見学することになった。

パソナ地下農場があるのは大手町野村ビルの地下二階。
大手町は日本経済の中心であり、地下鉄が五路線交わるという、
東京以外ではちょっと考えられない場所なのだが、
例のごとく僕は全然間違った出口から出てしまい、待ち合わせ時刻にしっかり遅刻した。

大通りに沿って有名な企業の本社ビルがこれでもかというほど並んでいる。
まだ終業時刻前ということもあり、オフィス街には凛とした雰囲気が漂う。

待ち合わせ場所のビルの前で、スーツ姿のAz嬢が街の風景にとけ込んでいた。
学生だが妙に大人っぽく落ち着いたオーラの漂う彼女、
昔は日経でバイトしていて、今はパソナに紹介してもらった証券会社で働いているとか。
就職したらすごく仕事とかできそうな感じの女性である。

ビルの角の反対側に回ると、yuko嬢も待っていた。
ウェブ制作の会社を経営している彼女、とても愛嬌のある人で、経営者にはとても見えないのだが、
6、7人でやっているという彼女の会社で作られたウェブページはなかなかのクオリティである。経営にはむしろ愛嬌が必要なのかも知れない。
学生の頃は音大で声楽をやっていたとかで、不思議な経歴の人。

さらに、東工大で地球環境を研究されているK先生が研究者風のラフな格好でやってきた。
「久しぶりだねー」と気さくに話しかけてくださるK先生は、
僕が学生の頃、同じ専攻で助手をされていた。現在は講師。

仕事帰りだがカジュアルな服装で現れたエヌは、厚生労働省に勤める国家公務員。
学部の頃からの友人で、ブログを見たといって久々に連絡をくれ、来てくれたのだ。

最後にやってきたriri嬢は駆け出しの写真家で、非常にエネルギッシュでモチベーションの高い人。

あとひとり、8年ぶりに会う知人のしんご氏がまだ来ていないが、彼はかなり気の置けない人なので、
たぶん僕らが先に行ってしまってもふらりと合流してくれそうであり、さっさと先に行くことにする。

一階のロビーはまるごとパソナが所有している。

受付で予約していることを告げると、ぴしっとスーツ姿で決めたお姉さんが我々をロビー奥に連れて行き、
パソナ紹介コーナーで企業理念などを説明しはじめた。

「人材派遣を通して新たな雇用インフラを構築し、社会に貢献していくことが創業時からの理念であり……」

長くなるのかと思いきや、案外手短に終わり、

「では、これから地下農場をご覧ください」

連れられてぞろぞろとエレベータに向かう。

「このビルは以前、銀行の本社ビルでした。その地下二階は金庫だったのですが、それを改装して農場にしています」とお姉さん。

地下二階に降りた。いよいよ大手町唯一の農園を見学である。

意外なことに、白い壁と木目調の床が調和したお洒落で清潔な部屋だ。
農場というより、カフェを思わせる。
木製の椅子とテーブルが並べられ、そのまま紅茶を出せそうな雰囲気。

実際のところ、このエリアはパソナの社員食堂も兼ねているのだそうだ。
僕の中での「社員食堂」のイメージと比べると格段にお洒落であるが、最近はこういうのが多いのだろうか。

「カメラ持ってきた?」とririに尋ねると、「ごめん、忘れた」
写真家のくせに何を考えているのだ。
僕はひとり、ぱちぱち写真を撮り始める。

白い柱の間から緑が顔をのぞかせている。
農場はいくつかの部屋に区分されているようである。

受付のような小さなテーブルの横にいたスーツ姿の女性が「ご見学ですか?」と訊いてきた。
「あ、はい」
「あとで係が説明しますので、とりあえず、ご自由に見てまわっていてください」

壁にいろいろポスターが貼られていて、活動の内容が紹介されている。

十分ほど遅れて、しんご氏が合流した。
会うのは8年ぶりである。
デイトレーダーという言葉が広まる前からデイトレーダーをやっていた彼。
今では人の財産も含めて、かなりの金を動かしている人である。

しばらくすると、奥から青いデニムのシャツにバンダナを巻いた女の子が出てきて、挨拶した。

「こんにちは」

快活な感じの女の子で、笑うとかわいらしい。
この農場でスタッフとして働いているとのこと。農場内を案内してくれるという。
毎日地下二階で生活しているとはとても思えないほど、健康的な感じである。

スーツ姿のお姉さんに案内されるのかと思っていたのだが、こちらの方がずっといい。
ちょっと雰囲気が出てきた。
コスプレは大切である。

「それじゃ、まずはこちらへ」

柱の間を抜けて、花卉を栽培している部屋に通された。

天井には無数の発光ダイオードが張り巡らされているが、その中にいくつか、強い光を放つランプ。

「メタルハライドのランプと、発光ダイオードで育てています」

咲き乱れる花壇。
外から運び込まれたのではなく、ここで種から育ったというのがポイントである。

中央には、周囲よりひときわ高いひまわり。

「このひまわりはもっと背が高くなる品種なんですけど、若干高さを抑えています」

それでも天井に触れんばかりだ。

太陽の方向に首をまわした経験のないひまわり。

同じ部屋の一角でトマトの苗が育てられていた。
三つの台のそれぞれに、赤、緑、赤と緑の混合の光を当てている。

「赤い光は植物の生長を早めるのですが、葉が厚くならない。逆に、緑の光を当てるとしっかりとした葉を作るようになるんです。真ん中のは、両方の光を当てています」

実験というより、どちらかというとオブジェだ。
現代アート。

部屋の奥にはガラス越しに、二つの台が並べられている。

「こちらのトマトには、レーザー光を当てています」と、さらりと説明する。

レーザーポインターでお馴染みのチカチカした赤い光が真上からトマトの葉を照らしている。

レーザーで育てたトマトなんて、何とも不思議な響きだ。
バンダナを巻いた健康優良児的な女の子がそれを説明するから、なおさら奇妙。

これもアートか。

「赤のレーザーダイオードで育てる方が、通常の赤い光を当てるより良く育ったんです」と説明してくれる。

これ、本当なのだろうか。
よく知られている現象なのですかと聞いてみると、別に誰かの研究を参考にしたというわけではなくて、試しにやってみたら、成長が速かったとのこと。
はたして再現性はあるのだろうか。もっと実験してもらいたいところである。

隣はハーブの部屋。さきほどの部屋より若干照明が暗い。

「ハーブというのは元々雑草の仲間なので、薄暗い所でよく育つんです。だから、この部屋も少し薄暗くしています」

いい匂いが漂っている。添えられたカードに、スペアミントなどと書かれている。

さらに、隣の部屋が水田になっている。
本当に、水田であった。予想していたより小さいけど。

四畳半ほどのスペースが二つ設けられ、それぞれ深さ十センチほどまで水が張られている。
かなり狭い部屋なのだと思うが、二面が鏡張りにされているせいか、若干広く見える。

「米は年に三回収穫しています」

ベトナム人もびっくりの収穫率である。
室内の気温をコントロールすればいいだけだから、当然といえば当然だが。

「でも、実のなっていない稲穂も多いんです。なかなか難しくて……」

片方の水田には、底に土でなくセラミックスボールというのが敷き詰めてある。
砂利を大きくしたような、小さな粒々。
液肥の流れがよくなるので、根腐れを防ぐ働きがあるのだという。
触ってみると、軽くてすぐに浮き上がってしまう。
お茶漬けに入れた“あられ”のような感じ。
こんなものが土の代わりになるというのは面白い。

さらによく見てみると、稲の茎に米粒くらいの小さな貝がくっついている。

「タニシですか?」
「ええ。以前、水面を覆うくらい藻が大量発生してしまったんですけど、タニシがつくようになってから、それが無くなって。だから残すようにしているんです」

タニシは漢字で書くと「田螺」。昔から田と共に生きてきた生物なのだろう。

「ここの稲の葉は柔らかいな」稲に触れながら、K先生が言う。「UVを当てていないから、クチクラ層が発達していないのかも。菌とか虫のことが心配になるけどね」
怪訝そうな顔をしているスタッフの女の子に説明する。
「元々、農学をやっておられた先生なんです」
「なるほど」
女の子は若干納得した様子。

「ここのCO2濃度はどれくらいですか?」とK先生が訊く。
「計測していないので分かりません」
「コントロールしているんですかね?」
「いや、普通のビルの換気だけです。調整したら、もっとよく育つのかも知れませんが……」

なんだか、大学の研究会での質疑応答みたいになっている。
K先生、血が騒いでいる感じだ。女の子はいくらか緊張した様子で答えている。

「K先生、今日は計測装置を持って来なかったんですか」と僕が口を挟むと、
「しまった。持ってくれば良かった。いろいろ“武器”を持っていたのに」

K先生は農学部の出身であり、現在は地球温暖化を研究している。
温暖化ガスのひとつであるCO2は専門中の専門である。

「これだけ植物があると、CO2濃度は低くなるんですかね?」と僕。
「いや。そうとは言い切れない。人もたくさん出入りしているから。どっちが勝ってるか……」

Az嬢は時折、思い出したようにメモを取っている。

「何に一番お金がかかりますか。光ですか」とK先生。
「空調も結構かかりますね」
「この環境だと、一番安い温度は何度なんですか」
「それは分かりません……。ただ、光量は多いほど良いと言われてるんですけど、ここは地上の太陽光の五分の一。設備の関係でそれ以上できないんです」
「なるほど。光はどういうサイクルで当ててるんですか」
「朝9時に点灯、午後10時に消灯しています」

少しだけお寝坊さんであり、夜更かしさんである。

水田部屋を出て、ガラスで仕切られた部屋に移動する。
なるたけたくさんの種類の植物を栽培するためか、ひとつひとつの部屋は狭い。

この部屋では何段重ねにもなったプランターが天井まで積み上げられている。

「ホウレンソウは50日で収穫できます。社員食堂でサラダ菜として出しているんです」
「ほう」
「だけど、コストパフォーマンスはまったく度外視で。テナント代も計算に入れると、葉っぱ一枚あたり1000円になるんです」

なにしろ大手町の地下である。日本で二番目くらいに土地の高い場所ではないのか。

「一株あたり、1万円のサラダ菜です」

パソナの社員になれば、そんなサラダ菜が毎日食べられるらしい。

「サラダ菜以外は観賞用です。安定して作れないので……」

それでもたまに囓ってみたりすることはあるらしい。トマトは非常に甘くておいしかったとか。

隣の部屋には何種類もの野菜が小さなプランターに分けられて少しずつ植えられていた。

「よく育つのはどれか、調べているところです」
「どれが一番よく育ちましたか」
「今のところ、唐辛子ですね」
「へー。意外だな」とK先生。
「どうしてですか」
「だってさ、なぜ唐辛子が辛いかというと……」

K先生の説明によれば、植物は害虫などから身を守るために刺激物を蓄えるのであって、
虫のほとんどいない地下農場でも刺激物がちゃんと作れるということに感心したのだという。
つまり、虫に噛まれるという刺激がなくても辛み成分が作られるということである。

続いて、トマトの部屋に入った。
壁一面にアルミホイルが貼られ、反射によってものすごく明るい。

「なぜこんなにアルミホイルを?」
「立体的に育てようとしているので、全方向から光が当たるようにしたいんです」

そういうものなのか。

トマトを植えた土台の部分はそのままオフィスの一角に置けそうなくらい清潔だが、元々は水耕栽培の専業メーカーが作っているキットらしい。
つまり、実際に屋内栽培で使われてきた装置なのだが、それを汚さないように注意しながら置いているという感じである。

「下から光を当て続けた時、植物がどういう風に育つかっていう研究は、簡単そうだけど、まだ誰もやったことが無いんじゃないかなぁ」K先生がつぶやく。「単なる冗談の研究で終わってしまうかも知れないけどね」

トマト部屋の片隅には茄子とパプリカが植えられていた。
「ちゃんと育つか、様子を見ているところです」
「何が一番手間がかかりますか」
「稲ですね」
女の子は断言した。
米は労働集約型の作物なのだ。狭い土地に大量の労働力を投入することで、その人口をまかなうだけのカロリーを作り出す。
日本やアジアの人口密度が世界的に見て異様に高いのは、米のおかげである。

「稲はちょっとした変化で成長の速度が変わるんです。少し目を離していただけで、弱くなってしまったりとか」
「温室育ちなんですね」
「ええ。サラダ菜とかは安定しているんです」
「もし虫がついたらどうするんですか」
「手で取ったり。増えすぎた時は、お薬使ったり」
「こんなとこで農薬使ったら大変ですよね。散布だけですか」
「いや、燻煙もします」
「ここで??」
「閉館している時に」

密閉された空間だけに、燻煙の巡りは良いかも知れない。
しかし、オフィスの上の階で会社員たちが残業している時、地下二階の水田で燻煙が行われているというのはなかなか興味深い光景だと思う。

ちなにみにこの農場では、稲の受粉までスタッフが行っているとのことである。
結構、仕事は多そうだ。

何か質問ありますか、と女の子が訊く。

「どんな人が良く見に来るんですか?」
「以前は中高年の人が多かったけど、最近は若い人も。修学旅行でたくさん来たりとか。マスコミの人もよく来ますよ。この前はCanCamのモデルの子が来ていて。こうやって、片脚を上げて写真撮ってました」

と、CanCam風に片脚を若干後方に上げる。
農業とCanCamのモデル。お洒落な組み合わせである。

「今までに何人くらい、派遣されたんですか」とエヌが訊く。

実はエヌ、厚生労働省では派遣業を管轄する部署にいる。
派遣会社が違法なことを行っていないかチェックするのが仕事である。
もちろん、今日はプライベートな興味で来ているわけだが。

ところがエヌの質問に対してスタッフの女の子は首を振り、
「まだ、派遣というのはやっていないんです。今後、農業への人材派遣プロジェクトを進めていくにあたって、まずは、農家さんとの繋がりを作るために、紹介するという段階なんです」
「え。それじゃ、今はどういう形態の契約にしてるんですか」
「農家と個人で契約してもらっていて。まだ手探りの状態なんです。就農希望者に直接秋田とかに行ってもらって……」
「いきなり行かせるんですか??」
「ええ」

契約期間は半年だという。いきなり秋田に行きましょうとか言われても、ためらう人が多いのではないか。

「合わなくて帰ってくる人もいます」と女の子。
「応募人数はどれくらいあるんですか」
「毎年、40人から50人くらいです。年に一回、募集するのですけど」
「応募者の男女比は?」
「男性の方が多いです」
「ということは、女性もいる」
「はい」

世の中には案外度胸のある人が多いのかも知れない。

「なーんだ。ここで訓練するわけじゃないのか」としんご氏。
「ここは啓発活動を行う場所ですよ」
「でもさ、こんなところで農業に対するイメージ持ってさ。いきなり秋田とかの農村に行って六ヶ月働いたりしたら。正直大変なんじゃないの」

歯に衣着せぬ言い方をする。
実際、ここは一種のエンターテイメントと思うのが正解であろう。
啓発活動。
農業訓練には、ちょっとお洒落すぎる空間だと思う。
都心の農業エンターテイメント。
それ自体が良いコンセプトだとは思うが。

「ここは何人で管理してるんですか?」
「6名です」
「休みは取れるんですか?」
「ええ。週五日間働いて。週末は交代で世話をしています」

休日は放っておけばいいというものでもないようである。植物は生き物なのだ。

「どういう経緯で始めた人が多いんですかね?」
「一回目のインターンで秋田に行って、気に入って残った者がほとんどです。あとは、農大の出身の人とか。私は違うんですけど……」
「というと、ご自身は?」
「私は最初、パソナのグループ会社に登録していたんですけど、誘われてこっちに来ました。元々、園芸が好きだったというのもあって……」

彼女、かなり似合っていると思う。スカウトされたんじゃないか。
僕らに質問攻めにされても嫌な顔ひとつ見せず、最後までにこにこしていた。

「では、サラダ菜をご用意しましたので」

カフェエリアの一角、白いテーブルクロスを敷いたテーブルに案内された。
一株一万円のホウレンソウである。

「ドレッシングがうまいよ」と言いながら、3000円目に手をつけるしんご氏。

僕も5000円分くらい食べた。

カフェエリアの天井からは青々とした葉が垂れ下がっている。それを見上げていたしんご氏がつぶやく。

「これ、地下鉄の天井がこういう風になっていたら、絶対いいよね」
「つり革じゃなくて、枝につかまったりとか?」
「そうそう」

たまにそういう車両があっても面白いかも知れない。

もう少し別の側面から今回の見学を考えてみたいと思って、エヌに訊いてみた。

「派遣会社って、悪いこともいろいろしてるの?」
「いやー、本省には悪い情報しか上がってこないからねー」

と言ってぼやかす。
それでも厚労省は、パソナの活動に良い意味で非常に注目しているのだそうだ。

「このプロジェクト、とても意義があると思うんだよな」と僕も言ってみる。「昔、茶農家でバイトしていたことがあってさ。どこの農家でも人が足りないから、学生相談所や情報誌でバイトを募集して、農家に派遣するというのをやっていたんだけど」今から六年ほど前の話である。「農家での仕事、気に入る人はすごく気に入ってくれるんだよね。今まで親の年金で生活していたような人が、農家ではすごく受けが良かったりして。『あの彼、今年も来てもらえませんか』とか、指名されてんの。人は場所によって輝くということだよね」

「ちょっと似てる話があって……」とririが口を挟む。「京大の理学部にいたQさん、知ってるでしょ。大学出たあと、ずっとパチスロで生活していたのだけど。うちの蔵ではサツマイモの収穫の時期にものすごく人手がいるから、彼にも声をかけてみたの。そしたら鹿児島まで来てくれて」

ririの実家は鹿児島にある焼酎の蔵元なのである。

「そしたら彼、その仕事を相当気に入ってしまったみたいで。そのままずっと、一年以上働いているんだよ」

今ではriri以上に実家に溶け込んでしまっているとか。

いろんな生き方があるものである。

そんな多様な生き方を考えるためのひとつの場所として、地下農場もまた、有意義で面白い活動だと思うのである。

地下農場を出た後、八重洲口の料理店に行って皆で夕食。

個性的な面々のため、会話が非常に弾んで面白かった。


しんご氏による報告

Posted by taro at 23:05 | Comments (2) | taro's blog ℃