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2006年08月19日

送り火

8月16日はお盆が終わり、五山送り火が行われる日。
京都盆地を取り囲む山々に大文字・妙法・船形・左大文字・鳥居形の文字が浮かび上がる。

研究室のKリくんがバイトでプログラミングを教えている木津屋橋武田病院の橋本院長から、送り火ディナーに来ないかというお誘いをいただいた。

橋本院長の奥様アイ・メディアエージェントというウェブページ制作の会社を立ち上げられておられ、先月、その社員の方々とのお食事会にご一緒させていただいたので、おそらく今回も屋上のビアガーデンのような所で送り火を見ながらビールでも飲むのだろうと考えてお伺いしたのだが、実際はホテル最上階のフランス料理レストランでのお食事会だった。

レストランは円形のフロア全体が回転する構造になっていて、どの席からでも均等に送り火が見れるため、非常に人気の場所らしい。

来られていたのは主に橋本院長のご家族。
橋本院長ご夫妻とご長男、ご次男。ご親戚に当たられるT井さん。武田病院グループの総務部長であるY原さん。そして、武田病院グループの創始者である武田道子理事長が来られていた。

なんだかすごい食事会だった。

京都にお住まいでない方のために書いておくと、京都における武田病院の存在感というのはすごいのである。

京都駅前の一等地に聳え立つ武田病院を初めとして、武田総合病院・宇治武田病院・東山武田病院・木津屋橋武田病院・十条リハビリテーション病院・城北武田病院・宮津武田病院などなど、グループに属する病院は総数10、関連施設は50以上。まさに京都を代表する医療機関である。

武田道子理事長は凛として威厳のある女性であった。
橋本院長の奥様のお母様に当たるそうである。
現在は武田病院グループの副理事長、武田病院の理事長と名誉院長などを務められている。

そもそも武田病院の始まりは、今を去ること40年以上前、武田道子理事長が保健所に勤める傍ら始めた夜間診療所だったとか。旦那様はその頃、関西医科大の皮膚科に勤められていて、助教授にまでなられたのだが、途中で戻ってこられて、お二人で武田病院を大きくしていったのだという。

今では経営のあまりうまく行っていない病院がグループに入れて欲しいと言ってくることも多く、さらなる拡大が続いている。経営を刷新することで、それらの病院も採算が取れるようになる。武田病院グループは優れた経営能力を持つ組織なのである。

橋本院長ご夫妻や武田理事長がこのレストランで送り火を見られるのは、毎年恒例の行事らしい。

「常連が多くてね。いつも同じ席に着くんですよ」と橋本院長。

実際、息子さんどうしが小学校の同級生であったという近所の小児科医の先生や、奈良の薬師寺の管長ご夫妻など、知り合いの方々が次々に挨拶に来られていた。

フロアの回転は非常にゆっくりであるため、五条から梅小路、八条にかけて街の風景が少しずつ動いていく。席に着いたのが午後六時頃。送り火が点火されるまでに二時間もあり、お話する時間はたくさんあった。

息子さん二人は大学生ということで、外国に行かれたり、近々行く予定だというお話をしていたところ、北欧の話題になって、理事長が言った。

「北欧は福祉先進国ってことで四回くらい行ったけど。老人ホームを見せてもらってね。セントラルキッチンを導入していて。それはうちも導入しようとしてるんだけどね、料理といったら、じゃがいもの炊いたんと、ハム。それから野菜が無いから、ブドウを皮まで食べるの。それが食事。日本でそんなことできないでしょ?」

福祉が充実しているといっても、その内容は日本とは全然違うのだ。

「でも、むこうの人って、税金に対する考え方が日本と違うっていいますよね。いつかは自分に返ってくるから、進んで払うっていう」と息子さん。

日本ではダムや道路が税金で作られるように、福祉にお金をかけることがひとつの公共事業になっているのかも知れない。福祉の方が自分に返ってくるという感覚は強そうである。

「チューリヒの病院の救急センターを見せてもらったんだけど。ずっと待っていて、一日一台だけ。うちなんて一日十五台よ」と理事長が苦笑する。
「むこうは人口が希薄だから」と橋本院長。

日本に北欧やスイスのモデルをそのまま適用できないとしたら、いったいどのような医療を目指していったら良いのか。

「日本の医療は今後、どの国、あるいはどんな方向を目指していくべきだとお考えですか?」と、思わずインタビュアーのように訊いてみる。

理事長は少し考えて、「そうねぇ。今、研修医の面接をしていて。そういうことを訊いてみるんだけど」

首を傾げて、具体的にこれといった方向は仰られなかったが、現状には問題がたくさんあるということを示唆しておられた。

「これだけ医療が進んでいるといっても、今年は平均寿命が短くなったっていうし」

医療技術が進んだからといって、人の寿命が延びるとは限らない。橋本院長のお話だと、病院内のベッドの数に応じて医療費が増えていくという傾向があるため、厚労省はとにかくベッドの数を減らそうとする。だが、その結果、必要な時にベッドが足りなくなることを医療者側では常に心配されているという。

「マスコミは長いこと生きているのが悪いことみたいな言い方をするでしょ」と理事長。

たしかに高齢者にしてみたら、「高齢化問題」といった表現はあまり嬉しいものではないだろう。

いろいろなことを語っているうちに、送り火が点火された。

宵闇に包まれた山々にひとつずつ文字が浮かび上がる。

お盆の間だけ現世に帰ってくるという死者の霊を見送るための火。

しばし会話が途切れて、遠くにともる火を見つめた。


武田病院グループ

Posted by taro at 2006年08月19日 10:05

コメント

たろうさん

興味深く拝見いたしました。
いただいた名刺を見ますと一度お会いしたお方のようです。

>橋本院長の奥様はアイ・メディアエージェントというウェブページ制作の会社を立ち上げられておられ、

拙サイトのなかにお写真がございますのでごらんくださいませ。
12・10UPノートルダム学院小学校は 生徒・保護者の方々が 恩人!
http://homepage1.nifty.com/xkyou/2005.12.8ND.html

また橋本由美さまへもどうぞよしなにお伝えくださいませ。

Posted by: tsubakiwabisuke at 2006年08月19日 11:50

奇遇です。
世の中、いろいろな所で繋がっているのですね。

またお会いしましたら、お伝えさせていただきます。

Posted by: taro at 2006年08月19日 12:10

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